日本とは全く異なる文化に憧れを抱き、また、言語の持つ美しさに惹かれ、大学受験の時にフランス語学科を受けたのはもう10年以上も前。運よくフランス語学科に合格し、学校ではフランス人の先生からは発音や文化やシャンソンを、日本人の先生からは文法や日本との違いを学び、フランスへの留学もいたしました。
4年間の勉強の成果もあり、英語よりも話せるようになったフランス語でしたが、社会人になってからフランス語を使う機会が全くなくなり、フランス語圏への再度の留学やワーキングホリデー制度の利用などを考えるまではしたのですが、実際は実行せず今に至ります。やっぱり、使わなければどんどん忘れてしまうもの。
日本に住むフランス人とお付き合いをしたこともありましたが、英語と片言の日本語のちゃんぽんで会話していましたし、彼のフランス語はほとんど聞き取れなかったんです!一度、彼の両親が来日し、お会いしたことがありましたが、やはりフランス語は発音が難しく、聞き取れないことが多かったため、結局は英語での会話になってしまいました…。
フランス語の教材を自分で買って勉強したこともありました。大学で使っていた教材は、海外の出版局が出した全文フランス語の教材(Bienvenue en France!)で、シチュエーションを一緒に体験することで必要な会話を覚えていくといったタイプの教材で大変覚えやすかったのですが、日本で制作されるフランス語の教材は、観光用の会話集か、みっちり文法を学ぶ教材のどちらかばかり。観光用の会話集では物足りず、かといって文法をしっかり覚えるほどの時間も気力もない。
仕事を持つ社会人にとっては、やる気が起きるタイプの教材ではなく、結局続かず教材ジプシーのような状態に。実際の生活では、仕事でもなんでも英語のほうが接する機会が多く、英会話力向上のため英会話教室に通っていました。英語で手いっぱいになり、フランス語教室に通う余裕はありませんでした。
“フランス語を思い出したい”これが今回「松平式フランス語のおぼえ方」をやってみようと思った動機です。私はフランス語初心者ではなく、一時は留学も経験した身。ただ、実に多くのことを忘れているんです。それを思い出すには、文法や会話について、精神的負担にならない程度にカジュアルに一通り学ぶ必要がある。そう思っていました。
そんなとき、新しい学び方ができる教材だという情報をいただき、やってみたいと思いました。数年間、全くフランス語と離れていた私に、フランス語をやり直したい、と思わせたのは、ある仕事がきっかけです。私は美容ライターをしているのですが、ある日、フランス発の化粧品ブランドについてWEB上で特集を組むので、その会社の社長にインタビューをしてくれないか、という仕事の依頼が来ました。
取材自体は、社長は英語で話し、広報の方による通訳も入るということで、フランス語を話せなくても仕事に支障は出なかったのですが、当日、少しでもいいからフランス語で話がしたい。そう思って、当日までに会話を少し、覚えていったのです。 取材前のご挨拶のとき、「ボンジュール」から始まり、「昔、フランス語を勉強していました」「でも、もうほとんど忘れてしまったんですけどね」と2、3の会話をかわしました。「フランス語が話せるんだったら、フランス語で取材をしたらどうだ?」と冗談まじりに言われたのですが、それに応えられる語学力がないことをとても悔しく感じたのです。
彼の口から語られるフランス発のメイクブランドのお話は、フランスのメイクの歴史や自立した女性のお話など多岐にわたり、成熟したフランス文化を垣間見ることができ、とても有意義な時間でした。それだけに、そんなところが好きで、フランスをもっと知りたくて始めたフランス語をほとんど忘れている自分に、喝が入るような気持ちでした。次回、またその社長に取材させていただくときには、もっと多くの会話ができるようになりたい。そして、フランスのメイクや美容事情を紹介するような仕事があったときに、手を挙げられるようになりたい。それが今回の動機でした。
それでは「松平式フランス語のおぼえ方」を使用した感想を書いてみたいと思います。フランス語を一度学んだことのある私ですが、数年たって忘れていたことを、次々に思い出せるようになったことが一番役に立った点です。あいさつから始まり、日常生活で使う単語を用いての練習問題を解くと、「あ、忘れていただけで、勉強の成果は自分に蓄積されているんだ」と思え、自信を持てました。また、難しいところはとばしてとりあえずは読み進めましょう、というスタンスであることが、最後まで教材を読ませ、三日坊主にならずにすむので、「フランス語はとっつきにくい」というイメージの払拭につながったことも役に立った点です。
一番よい点は、とってもカジュアルに学べること!仕事を持ち、小さな子供もいる私は、一日中フル稼働。お休みの日も家事に家族とのお出かけに、と自分の時間がほとんどありません。この教材は、寝る前のほんの10分、ちょっと時間があいた休日の30分に、楽しみながらフランス語に親しめる教材です。勉強の合間に多々挟まれるコラムも生の声が多く、フランスの実情に触れることができて、憧れだったフランスが、スリにあった経験やフランス人とつきあったことで現実味を帯び、欠点もある国なんだと思い起こさせられました。日常生活でベースとなる単語を集中的に勉強できるので、例えばフランス語会話ブックを見ても、理解が早いと思います。また、街のフランス語教室などに、自分である程度勉強してから通いたい、と思っていらっしゃる方のファーストスタディブックにできる位置づけの本だと思います。
もう少し具体的にいくつか書いてみたいと思います。
<例1>「「aller」「venir」の使い方の注意ポイント」
英語の「come」「go」の使い方同様、「aller」「venir」の使い方も気をつけなければならないという箇所は、なるほど、と思いました。「aller」「venir」の使い方について、「松平式フランス語のおぼえ方」のように例をあげて紹介している文法本は少ないと思うので、斬新な文法の紹介方法だと思います。「aller」「venir」の2つはちょっと特殊な活用をしますし、「私は…」というときに「je vais」「je viens」とどちらもvの音になるので、私にとっては間違えやすい単語です。日常生活で頻繁に出てくる言葉なので、気をつけようと思いました。
<例2>「未来形を使うということは、それほど確実ではない未来を表す」ということ
これもしっかり覚えたはずのことですが、改めて松平式・フランス語で勉強したときに、目からうろこ、のような内容でした。会話の中で未来形で話すことはそうそうない。現在形でほとんどの会話内容は事足りる。複雑な文法に悩むことなく日常会話を覚えられるので、初心者にはとてもありがたいことです。
<例3>「鼻母音の発音の仕方」
日本語で発せられる何気ない会話、このときの発音の仕方が、鼻母音を使う発音だということ、びっくりしました!確かに言われてみれば、くぐもった発音になるンは、授業で教わった鼻母音と同じ!このように、例をたくさんあげながら発音について親しみやすさをアップさせているところも、松平式・フランス語の特長だと思います。
<例4>「数字の呼び方」
大学在学時、数字は徹底的に暗記して覚えました。あの頃は時間もあったので、数字を言われたら即フランス語で答えられるよう訓練をし、スラスラと言えるまでになったのですが、今はもう忘れてしまいました。あまりに特殊な数字の数え方ですが、教材に書かれているこの方式を覚えておけば、数字がスラスラ出ないときでも、方式に当てはめて答えられそうです。全体的に、親しみやすさが持てること、堅苦しくなくカジュアルであること。難しい印象を与えるフランス語のファーストブックとしてふさわしい本だと思います。
なお、私がフランスに留学し勉強できて最もよかったこと、それはボキャブラリーが豊富に身についたことです。よく英語について言われることですが、文法は、中学で覚えた程度で日常生活のほとんどのことは会話ができる。後は、ボキャブラリーをいかに増やすかが問題だ、と。フランス語についても同じことが言えます。松平式フランス語にも書いてありましたが、フランス語も、近くて確実な未来は現在形で言えるなど、比較的、簡単な文法で多くのことが言える語学です。松平式フランス語で説明されている文法を徹底的に覚えれば、あとは実際にフランスに行って語彙力を増やす、というのもフランス語上達の近道なのかもしれません。
実際に、この本で勉強してから今までの間に、フランス人と話す(試してみる)機会はまだありません。ただ、今後、以前取材した化粧品メーカーの社長様にまた取材する機会がありますので、そこで、もっと話がはずむようになれたらと思います。将来的には、フランスの自立した女性とそれを認める文化について、調査と取材をしたいという構想があり、なるべくフランス語もわかったほうがよいので、長いスパンでフランス語を実践で使えるようになっていきたいと思います。