単位を落としたことがある
私でも大丈夫…
今までの教材との違い

東京都 販売員 金子博美さん(36歳)
単位を落とし、苦手意識が芽生える

私のフランス語との出会いは、短大の第二外国語でフランス語を選択した時でした。それ以前から南フランスに漠然と憧れがあったので、第二外国語は迷わずフランス語を選択しました。しかし、その授業は予想以上に難しいものでした。発音の見当もつかず、英語との違いも理解出来ず、そして文法にも馴染めず、ついには単位を落としてしまいました。授業にもキチンと出席していたにもかかわらず、他には何も落とさなかったのに、たった一科目、フランス語を落として以来、フランス語への苦手意識が芽生えてしまいました。
まず、とにかく、授業を受け続けても、一向に発音が理解できませんでした。動詞の活用も理解できませんでした。しかし、単位を落としたことを悔しさに、次は就職した会社で受講料をサポートしてくれる通信講座でフランス語を選択しました。それ以降もなんとかものにしたい、と市販の教材、フランス系アメリカ人によるマンツーマンレッスン、英語で書いてあるフランス語のテキスト、様々な方法を試し習得をしようとしました。しかし、どの方法でも、文法も発音も規則性をつかめないままだったため、その時々はただ暗記をして覚えても、結局しっかり身につくことがないまま15年が経過していました。
なぜそこまで、全く理解が出来なかったのか。英語や、同じく第二外国語で勉強したスペイン語は少しは理解出来ました。それに対しフランス語は、この教材の始めにもある通り、まず発音が日本人には予想がつきにくい言語であり、スペイン語などローマ字読みに近いものに比べると、始めから難しいとかまえてしまうところがあると思います。どの教材を使っても、英語のように何となく見当をつけて読むことすらできなかったのです。
だいたいこう読む、という法則のようなものがわからないので、ひとつの発音を覚えても、また新しい単語が出てくると、全く発音できないのです。これが英語はもちろんスペイン語でさえも、意味がわからなくても発音は何とか出来る、でもフランス語は出来ない。そういう状態になれば当然、英語やスペイン語よりフランス語は難しい、わかりにくい、と思ってしまいます。
15年前から、私にとっては発音がまず第一の難関に感じていました。発音が難しいという以前にどう読むかわからない、ということです。そして、そこに続けて女性名詞、男性名詞、など英語に存在していない事が入ってくるともうこの言語を理解するのは不可能なことのように感じてきてしまいます。これらの悩みに対し、今まで答えをくれた教材はありませんでした。もちろん今まで使った教材は、基礎から入り、ひとつひとつの例文、新しい単語に対しての細かな説明、発音方法を記してくれていました。 しかし同時に、いかにフランス語は英語と違うか、ということもたくさん記してありました。これが私には、いかにフランス語は英語より難しいのか、と書いているように取れてしまい、苦手意識を高める結果になっていたと思います。

多くの教材へのこんな不安

多くの教材はその章ごとに出ている例文、項目をくまなく完璧に説明してくれます。せっかくだから、すべて伝えておきましょうという感じです。でも実は、まだ基本的なこともわかっていない時に、単語の意味から、文法の説明、動詞の活用、そして発音の仕方と並べられても、たくさんあればあるほど、あまりに新しいことばかりなので、理解するのに時間がかかってしまいます。というより、理解しようとする時点で挫折しかかってしまいます。つまり今までは、覚えること、理解することの量の多さ、レベルの高さにおびえ、本当に突き詰めて勉強する段階にすらいなかったのかもしれません。
そしてもうひとつ、先に進みにくかった理由は、たとえばひとつの章で説明した例文に関しては、ここで説明したので、キチンと理解しましたね、という前提で次の章が書かれていることです。つまり、とにかくひとつの章を完璧に理解するか、丸暗記しないと、次の章に進めない仕組みになっているのです。
全くわからないでとりあえず進んでも、もうそこには答えがありません。その部分は完全に理解したものと片付けられて、新しいことの説明に入っています。前回のことがわからないと、その上にさらにわからないことが重なっていくだけなのです。そのため、ひとつの章で苦手なところや理解出来ない事があると、そこでつい手が止まってしまったり投げ出したい気持ちになっていたのです。もしくは通信教育で提出物があれば、それをこなすためにただ、丸暗記や構文を書き写すだけでした。これでは当然、自分で簡単な文を作ることすら出来ないし、モチベーションもあがりません。そして自信がつくどころか、どんどん苦手意識が増えていました。
しかし、本来はそもそも、日本語とも英語とも違う、日本人には馴染みのないものなので、理解するには時間と手順がかかって当然なのだと思います。英語だって最初は全くわからなくて、それが中学、高校と勉強し、何となく、英語とはどういうものかがつかめながら、語学そのものも習得したはずです。だから、フランス語流というのをカラダが覚えるまで、ゆっくり進んでいった方がかえって力になるのかもしれません。それが、今までの教材では、ひとつひとつの章がただ説明を沢山して完結していて、その章に載っているものに関してはくまなく説明しており、それをしっかり理解してから次に進むというシステムが多かったのだと思います。もしくは逆に、フランス語は日本語と違うので、細かく考えずひとまず暗記してください、といった教材も結構あるかと思います。これも挑戦したことがありますが、ひとまず暗記しても、後で、そういうことか、と理解する機会などなく、暗記を重ね、最初に覚えたことが抜けていく繰り返しでした。
つまり、結局よくわかっていなくても先に進まなければいけないからと、とにかくただただ暗記して進まざるをえないもの、もしくは頭から、理解できないから暗記して下さい、という教材が多く、そんな状態で次に進んでも当然理解出来ないことが増えるだけでまた暗記という流れで結局身につきませんでした。そしてそのうち、なんだか無理やり詰め込んでいるようで、少しずつわかってきた気がする、という手ごたえや楽しいという感覚は何も感じなくなるのです。そうすると、日常で必要としているわけではない言語なので、何となく生活の中でフランス語が遠ざかっていくのです。でも、またしばらくすると、あきらめるのは嫌だ、とまた新しい教材で勉強を始め挫折する、この繰り返しを何年も繰り返していました。今回この教材を知る事になる前も、カナダの友人から英語で書いてあるフランス語の教材を買ってきてもらい、すでに挫折しているところでした。

フランス語に対し構えていた私を変えてくれた

このような、私の今まで抱えていたフランス語習得に対する悩みに対し、「松平式フランス語のおぼえ方」は私の意識そのものを変えるキッカケとなってくれました。この教材は、これまでに築きあげられてしまっていた自分の中でのフランス語に対する既成観念にとらわれ、難しくとらえすぎて忘れていた事を再認識させてくれました。 例えば、もしかしたら当たり前のことだったのかもしれませんが、まず、ほんのわずかの単語数でも、身振り手振りを加えれば通じる事もある、完璧な必要はない、そういったことが前提でこの教材は始まっています。“万が一時制が現在形になっていても、昨日という単語が入っていればたいていのフランス人は昨日のことだとわかってくれるはずです。”こういったことが書いてある教材は今まで見たことがありません。
英語の教材でもありません。でも、この言葉は正しいと思いました。私でも、外国人が日本語で、“私は昨日京都に行きます。”と言えば、いちいち直さず、理解すると思います。こういった言葉にかなり救われました。また、まず、最初の章では、日本人の発音でも意外と通じる、と実体験を元に書いてくれています。
これら、この教材に書いてあることは、今までの経験でフランス語に対し、構えていた私を大きく変えてくれました。頭を柔軟にしてくれました。これは(細かい内容以前に)他の教材との最も大きな違い、この教材の優れた点だと思います。この意識改革によってほんのわずかな動詞しか知らない私が作れる文章が増えました。これは、新しい動詞を覚えた、ということではありません。
つまり、例えば今までなら、“食べる(manger)”という単語を知らない私は、“食べる”を使った文は作れないと思っていました。それが、prendreで代用出来るどころか、むしろその方が砕けているという事がわかりました。すると、その他にもprendreやavoirを代用することでなんとか文章を考えるくせがついてきたのです。これは今までの私から考えればすごい進歩です。今まではたいてい、作りたい文章にぴったりの動詞を辞書や教材から探し出して文章を作っていました。そしてその単語とその活用形を覚えなければいけないので、辞書を使ってでも文章が出来ただけでよしとしていました。
これは今思えば自分の力で文が出来たことにはなっていなくて、つまり身についていませんでした。それに対し、今は簡単な動詞で今まででは出来ないと思えた沢山の文を作り、慣れることが出来ました。すると不思議なもので“じゃあ次は新しい単語も覚えようか”という気持ちになってきています。つまり、私がフランス語を勉強する上で、知らない間に自分で植え付けていた“フランス語は難しい”という先入観を取り払ってくれるのに役立ったのが、この教材でした。

辞書なしでも文章が作れるように

今までは、正しい単語、正しい文法にとらわれすぎて、いつのまにかフランス語の勉強には辞書がつきものになっていました。でも、知っている単語のみで、辞書を引かずいくつか文章を作ることが出来ました。何となく文が作れればいいと思えてから、辞書がなくても作れる文章があることがわかったのです。考えてみれば英語を学ぶ際にも、辞書はどうしてもという時以外使うな、ひとつやふたつわからない単語があっても文脈がわかればいい、ひとつやふたつわからない単語があっても、簡単な単語に置き換えて文を作れ、と教わっていました。それが語学を習得するには早道なのに、フランス語に対しては本当に苦手意識が強く働き、今まで無駄なことをしたなと反省しました。しかし、それを気づかせてくれたこの教材には本当に感謝しています。

時制の理解

そしてもうひとつ、この教材で理解が深まったのは時制についてでした。これも半過去、複合過去など、英語ですら馴染みのない時制がたくさんあります。それにプラスしてフランス語独特の回りくどい言い回しなどもあり、時制はかなり苦手なひとつでした。これを日本語で詳しく説明してもらえばしてもらうほど、さらに苦手意識が働き、理解に苦しみました。しかし、この教材は主に英語と比べてくれたので、かなり深く理解出来ました。今までは自分で文章を作るには現在形以外はどんな教材を読んでも、先生に聞いても正直よくわかりませんでした。
でも、この教材では特に時制の章では、英語との比較がかなり多く、何となくこういう感じかな、とつかみ始めることが出来たのが、私には進歩でした。もちろん英語の時制とも全く同じでないものも沢山あるのですが、それでも、特に時制に関しては英語のほうがニュアンスがつかみやすいと思います。そして、また時制のところでも、完全に覚えてください、というものではなく、詳しくは後々、本当にわからないときには現在形でいいのですから、という言葉が、気持ちを軽く持って勉強する気持ちにしてくれました。この教材を読み進めると、間違えること、簡単に話すことが恥ずかしいことに思えなくなってくるのです。それよりむしろ、どんどん話してみたい、試してみたい、と思う気持ちが強くなりました。

今までありそうでなかったテキストの流れ

「松平式フランス語のおぼえ方」が他の教材と大きく違う点は、ひとつのことを一ヶ所ですべて説明しないところだと思います。この教材には、今の時点ではこのような発音で覚えておきましょう、まずはこのようなものだと軽く流して後でいい回せるようにしましょう、という言葉が沢山出てきます。これが私に次を読み進める気持ちを与えてくれました。 そして実際読み進めても、また前回まではほんの軽くしかわかっていないという前提で補足で説明があるので、そこでまたおさらいがてら学ぶことが出来ます。
たとえば、第2節でも、“そんなものかな”と読み飛ばして、あとで読み返すという使い方をお勧めします、とある通り、この教材はそんな使い方をしていくことで、結果的には深く理解をさせてくれるのだと思います。ひとつひとつ読んだことが全て、読んだ瞬間が理解した瞬間ではない、次につながっていく、この流れはありそうでなかった流れだと思います。
まずはフランス語の枠組みに様々な型からアプローチし、外観をつかませてから中に入り、固めていく。この教材はそのような進め方に感じました。この方法なら、フランス語のさわりだけを読んで、フランス語習得を実際以上に複雑に感じてしまい投げ出してしまう人をかなり減らすことが出来ると思います。フランス語は何も特別な言語じゃないんだ、と感じることは、これから勉強していく上でとても大切なことだと思います。また、次の章に必ず復習が入り、補足の説明があるのもありがたかったです。 ひとつのことを説明するのに、ひとつの角度から一回限り説明を受けるやり方と、さらっと進んで後におさらいがてらまたより深く説明されるやり方では、全く吸収力が違うと思います。
何事もしつこい位目で見たり耳で聞くと残るものです。この方式でまず、私のフランス語は難しい、ややこしい、という考えが完全に変わり始めました。何となくわかった時点で次に読み進めてもいい、というより、むしろ、この時点ではそれくらいの理解にしておいた方がよいんだと思えてから気が楽になりました。そして、次の章でまた少し新しいことを学び、さっきのことに関しても補足を受けるとさらに理解が出来る。この方法ならばと、次々にページをめくっていくことが出来ました。

フランス語の全体像が初めて見えた

そうしているうちに、フランス語とはこういうものなのか、こんな特徴があるのかという枠組みも徐々にわかってきたのです。考えてみると今まではフランス語、という全体を見たことがなく、全て断片的に勉強していたと思います。 だから、応用がきかなかったり、代用の単語を使うという習慣も身につかなかったのだと思います。この教材ではまず、フランス語をぐるっと一周外から見せてくれるところがある気がします。
そして、二週目には少し中に入って見せてくれます。この流れ、つまり、必ず二週目でその前の章の復習が入るので、教材全体の流れも頭に入りやすくなります。今までの教材では、ひとつの動詞が出てきて、そこに活用形が出てきて、まずそれを暗記しなければなりません。そしたら同じ活用形の違う単語がもうひとつ位出て一緒に覚えます。そして次の章に進むとこれは習得した前提で、新しい動詞、新しい表現が出てきます。そこでまたそれを覚えます。
普通のことのようですが、よく見てみると結局すべて暗記、なのです。そして、そこにも、だいたい覚えればよいです、などと書いてあることはなく、この先でも使うことがあるので、しっかり頭に入れておきましょう、などと書いてあります。それに対し、「松平式フランス語のおぼえ方」では、まず覚えた動詞がまた次の章で出てきます。前回何をしたか思い出しつつ、新しい使い方、少し深い文法を知り、違いを覚えます。そしてまた少し、新しい語句を触りだけ学びます。そしてその次の章で、また前回からの話の流れを復習します。つまりひとつの単語、例文に対して、ひとつの章で徹底的に触れ、理解するのではなく、順を追って章を進めるうちに深く知っていくことが出来るので、より頭に入りやすく、より記憶に残ります。丸暗記をして、何のヒントもなく後で単語を思い出さなければいけない状況に比べ、この学び方は、あの時はこういう話だった、あのあたりで学んだ内容だったな、と思い出すのも簡単ですし、具体的な例文も出やすくなります。

自分で作った文章

こうして、今までの教材では感じなかった“少しずつ自分の身になっている”という感覚を感じたことはかなり大きかったです。この教材により、どこかに載っていた例文を引用して話すのではなく、自分の言葉で話すという技術を得ることが出来ました。もちろんそれは、どこかの例文を引用したものに比べると幼稚な文章ではありますが、自分の文章です。

単語力がなくても

また、この教材そのもの、特に第一章あたりでは、ややこしくするよりシンプルに、とにかく通じることが大切、まずは通じさせようという考えのもとに作られていると思います。これだと、レストランでの注文さえきっと出来ない、とずっと思っていた私も、確かにこれだけシンプルに言えばかえって通じるのかも、と目からウロコの考えと、小さな自信が持てるようになりました。これはとても大きな収穫だと思います。
たとえば、フランス語は活用形が色々あるなど、ややこしという意識があったので、単語とその活用を沢山覚えないといけないと思っていました。しかし、英語に置き換えてみれば納得できるのですが、avoirやprendreの単語だけでもこんなにも色々使えるんだな、と改めて気づくことがあったり、確かに基本的には単語力がなくても、それ、と言いながら指を指せばオーダーできるんだ、ということも、考えたら当たり前なのですが、構えすぎてて忘れていることも思い出させてもらいました。

フランス人の友人に試してみたところ

そしてそういうことに気づくと不思議と実際に試してみたくなりました。そして、まるっきり日本人的な発音で、ドイツ系フランス人の友人に伝えてみたところ、笑いながら“よくわかる”と言っていました。こうして通じるんだ、と実体験でわかるとさらに小さな自信が膨らみ始めました。本当にこの教材のおかげです。この教材は、他の教材を勉強した人に対し、意識の改革をしてくれる教材だと思います。それと同時に初めてフランス語を勉強する人にとっては私のような、フランス語に対する必要以上の構えなくして入り込むキッカケになる教材だと思います。ですので、数々の教材を試しても苦手意識が強い人、そして初めてフランス語を学ぶ人、どちらにも強くお勧めしたいと思います。

混乱しがちな私にはもってこいの教材

一般的にはひとつのこと(たとえば人称、またはêtreなど)を何ページにも渡り説明し、徹底的に理解・暗記させるという方法がとられますが、「松平式フランス語のおぼえ方」は簡単な説明をして、使い方、応用などは後の項に回すという点があります。これは私のような、最初に色々言われてすでに頭が混乱してしまって、そこで立ち止まってしまう人にはもってこいな教材だと思います。簡単な説明ならば、何かわかったような気がするし、とりあえず次に読み進めてみよう、という気持ちになるからです。そして、その次を読むと、少しわかってきて、また説明が少しなので、またその次を読む気になるのです。
また発音に関しても、カタカナで覚えるな、という教材も結構ある中、とりあえずだいたいの発音をカタカナで書いてくれるというのは結果的には発音の特性をつかむのが早いと思います。発音もさっぱりわからないところを、細かい音の出し方などをいきなりしっかり教わっても、それ以上新しい単語が出た時、絶対読めません。
だったら、カタカナで読み方を書いて、だいたいこんな発音で読めばいいのか、と覚えて、少し先の章で、例えば“r”は少しのどの奥に引っ掛ける感じで発音すると、よりフランス人の発音に近くなる、と言われれば確かに“試してみよう”という気になりました。

英語との比較が分かりやすい

また、適度に英語との比較もつけてくれたところがわかりやすかったです。(たとえば時制、部分冠詞、du やdeの項などでの英語の例えなど)もちろん英語とも違いは沢山あるとしても、日本語とフランス語は文法がかけ離れ過ぎています。そのため、いくら日本語で説明されても、日本に存在しない文の作りは理解し難いものです。それが、英語と比較してもらうと一気に納得出来ることは多いです。特に目的をあらわすto不定詞に当てはめて説明した項などは、とても頭に入りやすかったです。なるほど、と思いながら読み進めていました。
また時制の項も、まるっきり英語と同じでなくても、理解するのは早かったです。時制や文法は日本語の文章と並べても決してわかるものではないと思いますし、かといってフランス語は特殊だから、と説明文だけだったら、そこで立ち止まっていたでしょう。また、英語と、完全にまたはほぼスペルの同じもののリストがあったのもとても参考になりました。同じく、日本語になっているフランス語、の項目も興味深かったし、参考になりました。
このようなちょっとしたことをさらっと書いてあるのは、意外とためになったり、小休止になったりもします。話がそれましたが、とにかく、説明がしつこすぎず、少し複雑な文法の項目になると英語が登場してくるあたりが、私にとってはタイミングがパーフェクトでした。

コラムで実際のフランスの様子を知る

もうひとつよかった点は、コラムです。コラムが入るタイミングも、ちょっと頭を使ったな~と思う後の絶妙なタイミングだったのと、実際にフランスで生活している方達のコラムも多かったのが特にためになりました。ちょっとしたフランスまめ知識のようなコラムももちろん勉強になるのですが、わたしとしては、日本人が実際現地で感じることを学べるのはとても嬉しいことでした。わたしもカナダで6年生活し実体験で、語学を学ぶには、現地の様子、習性、習慣などを知ることがかなり大切だと痛感していました。
その国の人々の習性、日本人との違いを知ることは、なぜ日本では言わないような言い回しがあるのかとか、なぜ日本語と比べそんなにストレートな表現なのか、と言った事を理解するにもとても役立つと思います。もし日本にいながらにして、一度も行ったこともないし、風習も知らない国の言葉を完全にマスターした人がいたとしても、習慣を知らなかったら、日本語をそのまま訳しても、使えない文章だったりすることは多々あると思います。それくらい、言葉と人種、生活は密接なものだと思います。 そのため、今回の教材に載っているようなコラムは、日本にいながらにして実際のフランスの様子を知ることが出来る、とても良い内容だったと思います。やっぱりフランス人は働きものじゃないんだな~そんなことを思いながら読んだりしていましたが、そのようにして、フランス人を知ること大切だと思います。
しかも著者の方だけの言葉ではなく、色々な人が文章を寄せてくれているのはとても素晴しいことだと思いました。このようにこのコラムたちを読むことにより、フランス語そのものだけではなく、フランスという国、フランス人にも興味が沸いてきて、モチベーションが上がっていきました。フランスそのものにより強く興味を感じるのです。このような気持ちになると、さらにはフランスに実際行ってみて、フランス語を使ってみたい、と思うようにもなります。

構成も良かった

また構成も優れていました。今まで私が使った教材は、たいてい始めの方で、基礎的な挨拶、基礎的な動詞、数、曜日などがまず一気に説明されていました。朝・昼・晩の挨拶、初めてひとと会うときの挨拶、ごめんなさい、ありがとう、そしていくつかの動詞の活用形。ですが、「松平式フランス語のおぼえ方」で数字と曜日が出てきたのは決して最初の方ではありません。
まず始めの方では、それ、もしくはあれ、だけを使って、とにかく何か簡単な質問やオーダーが出来るような文が作れれば良い、という程度の簡単な説明にとどめてくれていました。まずは、ごくわずかの動詞と基本的な文法、そして構成を身につければ良いものでした。そしてそれに慣れてきた頃にその先の章の中で、数や曜日などが出てきました。そうすれば、まずは最初のほうの章で文の構成を覚えて慣れているので、そして少し先の章でそれ、あれ、で済ませていたところに新しく学んだ単語を入れればいいわけです。この流れは私にはとても自然で、とてもゆるやかなペースに感じました。
まず、最低限の言葉で出来る簡単な文章から、旅行で使う言い回し(ただしこれも、一般的な教材のように簡単ながらも完璧な文章ではなく、ジェスチャーも交えれば通じる程度の入門から教えてくれます)につながり、それから少し深く文法の話も交えた本格的な言い回しという流れがあります。
このように順を追っての構成は、流れとしてごく自然で、それに沿って勉強がやりやすいものでした。これも他の多くの教材にはない点だと思います。他の教材は通常、êtreやavoir他、よく使う単語の活用、挨拶、時間・曜日・数字など、必ず必要にはなってくる用語が最初の章に並んでいると思います。私としてはどの教材も、最初が肝心、と最初の章が濃すぎる印象があります。 一気に色々説明されるので、肝心の最初につまずきます。何度も書いていますが、それが次に進む気持ちを妨げてしまうのです。「松平式フランス語のおぼえ方」は最初が無駄なく簡単なので、もしかしたら習得出来るかも、と期待を込め進む事が出来ました。

よく使われる言い回し

そして、この教材は普通の教材のような堅さがなく、よく使われる言い回しを覚えられるのも良い点では、と思います。たとえば、挨拶は最初のほうに出てきますが、Bonjourについて、ただ“こんにちは”と“おはよう”の意味ではなく、いかに色々な場面で使うのか、ということも書いてありました。今までいくつか教材を使い勉強しましたが、恥ずかしながら、お店の店員に話しかけるときもBonjourでいいなど気づきませんでした。今までの教材はexcuse moi, と教えられていたと思います。これはフランス語のみではなく、どんな言語でも往々にして起こることですが、外国語として言葉を学ぶ際のテキストというのは、言い回しが固すぎたり、現代的ではないのです。たいていは、ひとつの文章に対してひとつの意味が表記されているので、それを丸暗記という感じでした。Bonjourもとにかく、“こんにちは”と“おはよう”としか覚えていませんでした。 カナダにいた時にも、日本語を勉強しているカナダ人や中国人から、(日本語で)“お元気ですか? 私は元気です。”と言われることがよくありました。どうして、今でもこの受け答えで教えているのだろう?と思いましたが、どうやら日本の子供向けの英会話学校でも、いまだに、先生と生徒と会話は“How are you?”“Fine, thank you. And you?”だということを親戚の子から聞きました。日本で“元気?”と聞かれたときに、“私は”をつけて返す人はほとんどいないと思います。カナダで生活していて、How are you?と聞いたときに、Fine thank you,と答える人も、まして、and you?などと返してくる人もいませんでした。このような教え方では、発音どうこう以前に言い回しからして、ネイティブとはかけ離れています。余計、外国語として勉強した人というのが強調されてしまいます。それがこの教材は堅苦しいより、“むしろくだけた方が現地の人らしい”、とか、“発音も実はフランス人でさえ曖昧だ”、などという、意外と他では教えてくれない実状を交えてくれていると思います。この教材で学んだ言い回しは、もしかしたら、他のどの教材のものよりもシンプルだけれども、一番本物のフランス人のフランス語に近いのでは、と思います。

まとめると

この教材の優れた点は、全体として、とにかく表現が簡潔なこと、100%の理解はすぐには出来ない、必要ない、という前提で進んでいくということだと思います。途中途中に、軽く流してください、これだけわかれば十分です、と言った言葉が入るのも、とても気持ちを楽にしてくれます。この教材の流れ、まずはシンプルな単語の簡単な説明と例文がいくつかあり、その後おさらいのテストがあり、そこでそれ以上は突っ込まず、よしとする。この程度の内容であれば、自然と頭に入るし、理解も出来る。そして、理解出来た自分を少し嬉しく感じるので、次を読みたくなる。そして次の章にまた別の表現や単語が出てきて、それも同じように、簡単にさらっと説明され、軽く流しましょう、といわれる。
この流れにより、難しい、もしくは、暗記しなきゃと感じる必要もなく何となくの理解がそれぞれにできます。そして、今までこうじゃなきゃいけない、文法と発音を間違えたら通じないのではないか、と思っていたことが、こんな簡単な表現でもなんとかなるのか、と思えるようになってきます。そして、それがだんだんと本格的な表現の章になった時に、より深く説明してもらえます。そこでは、基礎がすでに頭に入っているため、飲み込みやすいのです。今までやったことにプラスして、少し新しい単語や文法がわかってきた時に、頭の中ですべてがつながってきます。
この教材では、ひとつひとつが独立して説明されているのではなく、まず広くぐるっと勉強して掘り下げているので、一箇所深く理解すると、そこから応用がきくようになるのです。このように、少しずつ色々なことを学びながら、レベルが上がっていくため、最後まで読み終えるのにも今までのように苦労せず、むしろ楽しくさえ感じました。そして、自分自身でも驚いたのは、読み終えた時の理解の度合いです。今までの教材に比べはるかに高かったです。しかも実質勉強した時間は今までの教材に比べはるかに短いにもかかわらず、です。
そして、気づけば結果的には、最後まで読み終えると言い回しに応用がきくようになっていたり、わからない言葉も自分で何とか活用が想像できたり、という自分の力がついてきます。自分で意識していないうちに何となく、わからない単語が出たときの対処法や言い回しに困った時の逃げ方というものもわかってきました。これはつまり、すみからすみまで細かく説明されている教材では習得しにくかった“自分で考えて文章を作るチカラ”が知らない間についていたということだと思います。あまりに多くの情報を与えられるとそれら全てを理解または暗記することに精一杯になってしまうので、その先、自発的に考えることはなかなか出来ません。
しかし逆に興味を持って読み進んでいる時に、“今の時点ではこの表現で大丈夫です”、と言われると、もう少し上級になるとどんな言い方なんだろう、と気になります。すると少し頭を使ってみたり、調べてもわからなそうなら、先にページをめくってその単語の出てるページを探してみたりしてしまいます。これも他の教材では体験しなかった事ですが、いつのまにか教材に対して受け身ではなくなっていたのです。たくさん説明されたら、それだけで頭がいっぱいで、何か新しいものを知りたいと考える余裕すらありせんでした。それがこの教材では、さらっと触れるからつい、もっと知りたくなってしまうのです。ただただめくるページの字を追うのではなく、疑問がわいてきたり、知りたいという気持ちが起き、そこから自分が動き始めました。この教材にはそんなよさもあると思います。
読んでいくうちに、もっともっと知りたいという気持ちになるのです。今回この教材を学んでみましたが、もう一度じっくり学ぶのと同時に、もう少し突っ込んで勉強していきたいな、という気持ちになっています。自分の意識の向上、これが「松平式フランス語のおぼえ方」で習得した一番の財産だと思います。

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